朝と夜が長いブログ

インターネッツ業界的なことを書こうかと思います。主にグロースハックとか。

DeNAの新規事業『マンガボックス』のグロースハックがすごい

この記事をざっくり言うと:

  • マンガボックスはスマホ時代の週刊少年誌
  • サービスを自己成長させる“3つの仕掛け”がある
  • さすがソシャゲ屋さんはノウハウの塊!

 

正月にダラダラとテレビを見ていたら、『マンガボックス』なる耳慣れないサービスのCMがやたらと流れるので、気になって調べてみたらモバゲーでお馴染み、DeNAさんの新規事業なんだそう。

 

人気マンガ家の作品が無料で読める週刊のマンガ雑誌アプリマンガボックス12月4日創刊!~講談社、小学館などとの提携で人気マンガ家の描き下ろし28作品を連載~ | 株式会社ディー・エヌ・エー【DeNA】

 「マンガボックス」は、連載マンガを無料で読むことができる週刊のマンガ雑誌アプリ(iOS/Android版)です。毎週水曜日に最新号の更新を開始し、毎日3~5作品ずつ一週間で全作品が更新されます。講談社、小学館などとの提携で、異なる出版社の人気マンガ家の新作や人気マンガのスピンオフ作品などを「マンガボックス」に集約し計28作品を創刊号から連載します。

 

「人気マンガ家の作品が無料で読める」というのがウリだそうで、すでに刊行されている作品も普通に読むことができます。また、マンガボックスでの新連載に関しては、そのまま電子書籍や紙でも単行本として発売することを予定しているみたいです。

 

出版畑の外から切り込んで講談社と小学館を説き伏せ、無料でコンテンツを提供させるという非常に挑戦的な試みなわけですね。スマホ時代の週刊少年ジャンプ(あ、講談社だからマガジンか)を作ろうってな感じですかね。

 

で、表題の件ですが、サービスを自己成長させるグロースハック的な仕組みがしっかりと組み込まれているんです。

 

※ここまで書いて、「もう誰か書いてるんじゃね?」と思ったので検索したらみんな大好きThe Startupさんがタイトルもろかぶりの記事をすでに書いていたのですが、あんまりグロースハック的な内容が深堀りされてなかったので気にせず続ける事にします。

 

最新話を「先読み」するために、ソーシャルへシェアさせる

週間連載なので、当然一週分はたいした長さはありません。なので、一話目から読み始めてもすぐに公開されているモノに関しては読み終えてしまうわけです。そこに「待ってました!」と言わんばかりに『シェアして次号分を先読み』というボタンが現れる。

 

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  ↑ 最新話を読み終えた後の画面


ユーザーとしてはこの悪魔のささやき的ボタンに悩むわけです。「あぁ、続きが気になる…でもTwitterにシェアか。友達に見られるのちょっと恥ずかしいな。」そして、「まあ、いいや。どうせおれのツイートなんて見てないだろ。えいっ!」という具合にシェアされるわけです。(そんなに気にせずやるかも)

 

作品ごとにシェアして先読みが可能なので、読んでいる作品の分だけ、その人のソーシャルグラフにマンガボックスのアプリのダウンロードURL+マンガの画像付きのツイートが流されるようになっています。

 

試しにTwitter上で#マンガボックスと検索してみたら深夜にも関わらず1時間に500ツイートくらいのペースでツイートされていたので、この仕組みはかなりDLに寄与していると思います。

 

1話分が雑誌より約10ページも短い

雑誌の連載マンガは、新連載には他よりも多くページを割きます。これは、様々な意図があるかと思いますが、なにより初めてみる物語にすぐに没入してもらうために、ある程度厚みがあり、完結する話を見せたいという狙いがあるようです。

 

マンガボックスについても、同様の仕掛けがなされてますが、雑誌と決定的な違いがあります。それは“1話分のページが短い”ことです。

 

最初の1~3話こそ20ページ前後あるものの、それ以後は10ページ前後となっており、一般的な連載漫画が新連載で30ページ前後、以後1話20ページ前後*1なので短めに設定されている事がわかります。

 

こうすることで「物足りない」「早く続きが読みたい」という欲求不満を満たす手段としての“シェア”をより活発にさせることに成功しているわけです。もちろん、はじめの3話に十分なボリュームをもたせる事で、ハマる前に離脱される割合を下げる工夫もポイントかと思います。

 

更新日時がバラけている

マンガボックスでは、作品によって更新する曜日をバラけさせる事によって、毎日のようにアプリを起動したくなるようになっています。

 

 

 

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  ↑ 配信曜日ごとにラベルが付いている

 


当たり前のことですが、 アプリやウェブサービスの世界ではアクティブユーザーをどれだけ増やせるかがマネタイズに直結します。

 

決定版:サービスの盛り上がり具合をユーザの数(DAU)から読み解く方法

売上=客数(DAU)×客単価(ARPU

 

今後どのようなキャッシュポイントを持ってくるかわからないので、上の公式がそのままあてはまるかはまだ分かりませんが、アプリ内課金が導入されれば、この仕組みによって引き上げられたアクティブ率がモノを言うようになるかと思います。  

 

結論

1ヶ月で200万DL行ったみたいですね。

 

DeNAの無料漫画アプリ「マンガボックス」200万ダウンロード突破 公開1カ月で - ITmedia ニュース

 

日々コツコツユーザー増やしてる人間からすると、大企業がカネかけてプロモーション打って即200万人とか、バカらしくなるくらいのスピードですが、カネの力だけではここまで急成長しないんじゃないかとも思うわけです。

 

テレビCMを投下してるから成長して当然だけど、こうした仕組みとの掛け合わせで、お金をかけて一気に囲ったユーザーが自然に次のユーザーを連れてくる仕組みがしっかりと構築されているので、急成長にも納得感があります。

 

マンガボックスは小手先のテクニックではなく、 サービス全体の設計からグロースの視点をもって造られていると思いますし、グロースハックが根付いている素晴らしいチームで作っているんだろうなと推察します。

 

さすが、ソシャゲ屋さんはノウハウの塊ですね。見習いたい限りです。

 

 

*1:何故ギャグ漫画のページ数はストーリー漫画より少ないのか考察する - アニメな日々、漫画な月日

週刊漫画のストーリー漫画は1話当たり16~22ページ程ですね。

多くは19ページが基本。「サンデー」の多くは18ページかな。「マガジン」になると22ページくらいとやや多めという印象が強い。